by ばかぼん父
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2004年 11月 12日
科学担当の毎日新聞記者のブログ「理系白書」の「税金の使い方」という記事に、
国際熱融合実験炉(ITER) の青森県六ケ所村への誘致に関して 「7000億円超の税金が投入されるぞ!」と書かれていた。 この件の概要は7月の「記者の目」に「元村記者の気持ち」も含めて書かれている。 以前に知る権利とスポンサー意識 でも書いたように、「国民不在ではなく、理解し納得した上で税金を使って欲しい」ということを多くの人々に啓蒙しようという姿勢には、応援したい気持ちで一杯だ。 多くの人が興味を持てるように啓蒙することで、ブログの記事の最後にあるように「科学者の意識も変える」ことで科学の発展にも繋がると思う。 ところで、アメリカの凄いところは、「何でも1番じゃなきゃいや!」 というだけじゃなく、一見「役に立ちそうにない」ことにも 「長い期間研究費を出している」というところである。 例えば「宇宙からの電波」とか、「昆虫の飛び方」とかね。 今になってみれば、昆虫の飛び方の研究は小型飛行ロボットの技術へ繋がった。 私が生きている時代という短い間では、中には無駄に終わるものも あるかも知れないが、「知識」が「正しいもの」であるなら、 何事も将来実用化へ繋がって人類に貢献する可能性を秘めている。 正しいことを知るための「純粋な研究」は、時間は掛かるが 間違いをおかすリスクは少ない。 何故なら「物欲」や「名誉欲」ではなく、観察された事実が全ての「知識欲」だから。 ところが、実用化を見据えた研究というものは、どうしても目標が先にあるので、 思惑どおりに運ばないというリスクが"少なからず"ある。 最近は、基礎研究の分野でも、実績重視だの独立採算だの外部資金導入だのが 必要だと言われて競争原理が持ち込まれている。 研究者間で自然淘汰が起こると思うが、 研究の「質」と「研究費」が本当に正しく評価されているかには 疑問のあるところだ。 研究者の「質」だけではなく、お金(研究費)の稼ぎ方の上手下手でも 淘汰されるのが事実である。 日本の科学研究全体が「正直者がバカをみた」り 「貧すりゃ鈍する」にならなければ良いと懸念するところだ。 話が逸れて申し訳ない。 やっと本題だが、 今回の「リスクが高いと思われるプロジェクト」に7000億円もの税金を投入することをどう考えるか? 私は、実際に関わった研究者がそれほど誘致に乗り気でないとすれば、 成功の確率は極めて少ないと考える。 国として借金地獄でありながら、新しい(しかも成功があやしい)投資に 手を出すとは、正気の沙汰ではない。 一時的に一部の工事請負会社や研究関連企業等は潤うかもしれないが、 その一方で国の借金は大きく膨らむだろう。 しかし、全く別の考え方もできる。 「日本」はどちらかといえば、何事も「目先の利益」に目が行きがちだが、 ここは思いきって、これを「お金もうけ」になる事業ではなく、 「国際貢献」であると割り切ってしまう。 「失敗は成功のもと」というように、ある目的には「失敗」であっても、 その過程で得られたデータや知識は人類共通の「財産」となる。 いっそ「武士は喰わねど高楊枝」で、温暖化が進み続ける地球上の 将来の地球市民のために究極の発電システムをつくるための 「試行錯誤の一つを日本で負担するのだ」と考えるのはどうだろうか? どこかがやれば、他の国は同じ轍を踏まなくてすむというわけだ。 国が国民に「現状」「成功の見込み」「費用対効果」「国際貢献度」などを 誠実にキチンと説明し、大多数の日本国民がちゃんと理解し納得したうえで、 地球環境を守るための研究事業に資金を投入しているということが、 「納税者」の誇りと思えるようになれば、 それはそれで大変素晴らしいことだと思う。 あとでWired Newsで見たのだが、EUは「日本に決まっても独自でやりたいらしい」。 研究というものは、「やる気」があり、上手くいくと信じている人がやらないと成功するものも成功しない。 この件はフランスに譲っても良いのではないか? 日本は日本で将来に役に立ち、地球に優しく勝算のあるプロジェクトを考えてはいかがだろう。地球規模で考えれば政治とか利権とかは関係ないと思う。 忘れてはいけないのは、大きなプロジェクトを成功させるためには、 その根拠となる「科学に対する誠実さ」に裏付けられた「正しいデータ」が 必要であり、そのためには、地道な努力が必要であることだ。 しっかりとした「土台」がないところに「巨大建築」を建てようとすると、 砂上の楼閣になるか、もしくは「天空の城」のようなファンタジーになってしまう。 国がやるべきことは、自分たち自身もよくわからないような「巨大建築」を わからないまま「別の下心で」強引に進めようとするのではなく、 「土台」となる「正しいデータ」を蓄積させたり、 それを行う基礎研究者を育成することだと思うけどなぁ。 P.S. ITER の読み方は「イーター」(金喰い虫)らしい。
by bakabon_chichi
| 2004-11-12 18:12
| はぐれ研究員の独り言
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